2021年3月に上場予定のAppier Group(4180)に関して、プライマリー(初値売り)とセカンダリー(初値買い)投資すべきかを検証する記事になります。
ただし、プライマリーについては様々なサイトで予測されておりますので、他サイトの予想をそのまま抜粋するにとどめ、メインはセカンダリーに妙味があるかに言及します。
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- Appier Groupはマーケティング向けにAI技術をSaaS型で提供するビジネス
- プライマリー目線では想定価格の1.5倍程度と予想されている
- セカンダリー目線では業績がよく、初値が暴騰しないことからポジティブと考えられる
どーも!タカナビです。
先に結論から申し上げると、今回取り上げるAppier Group(4180)はプライマリー投資としては普通。セカンダリー投資としては状況に応じて参戦するべきIPOとなりそうです。なぜそのような見解を持つかをお伝えできればと思います。
Appier Groupの事業を一言で言うと、マーケティング向けにAI技術をSaaS型で提供になります。
マーケティング特化のAI SaaS企業は類似企業は少なくとも国内には無いのではないかと思います。
- Appier Groupへのプライマリー投資を検討されている方
- Appier Groupへのセカンダリー投資を検討されている方
- 銘柄分析を参考にされたい方
※投資判断は自己責任でお願いします。
IPOの基本情報
IPO時の基礎データは以下の通りになります。
特徴としては海外の公募・売出がある点ですね。
項目 | データ |
---|---|
想定価格 | 1,400円 |
仮条件 | 1,400円 ~ 1,600円 |
公募価格 | 1,600円 |
公募株数 ※1 | 9,101,000 |
売出株数 ※2 | 9,531,200 |
公開株数(合計) | 18,632,200 |
オーバーアロットメント | 984,700 |
発行済株式数 | 90,771,490 |
上場時発行済み株数 | 99,872,490 |
想定ベースの時価総額 | 1,398億円 |
※1 国内:2,697,400、海外:6,403,600
※2 国内:2,203,000、海外:7,328,200
Appier Groupの事業内容
事業内容
冒頭でご紹介した通り、Appier Groupはマーケティング向けAI技術のサービス提供が事業内容です。
プロダクトは4種あり、以下の通りです。(自分の理解です)
- CrossX(クロスエックス):潜在ユーザーの予測及び獲得のためのプロダクト(2014年ローンチ)
- AIQUA(アイコア):ユーザーの維持及び関係構築のためのプロダクト(2018年ローンチ)
- AiDeal(アイディール):購買・アクションの動機づけのためのプロダクト(ローンチ時期不明)
- AIXON(アイソン):獲得したユーザーや外部データを使いさらなる分析を行うためのプロダクト(ローンチ時期不明)
Webマーケティングの世界ではファネル毎に打ち手を考えるものです。
ファネルとは日本語で「漏斗」という意味で、Webで何かユーザーがアクションする(例えば、「靴を買ってもらう」や「ホテルの予約をしてもらう」等)際のプロセスを表します。
Amazonで買い物をするときのユーザーの行動で考えるとわかりやすそうです。
- Amazonで買い物することを認知してもらう
- Amazon内で商品の比較検討をしてもらう
- Amazon内で購入候補の商品を決める(カートに商品をいれる)
- Amazonで商品を購入する
といった購入のプロセスですね。このプロセス毎に打ち手を考えていこうという考え方がファネル分析と呼ばれたりします。「ファネルとは」でぐぐったときに最初に出る記事を参考までに載せておきます
参考:https://www.innovation.co.jp/urumo/funnel/
Appier Groupのプロダクト群もこのファネル毎に事業内容を表しています。
目論見書は海外売出もある関係で各証券会社からログインしないと見れ無さそうですね。。
有価証券報告書から事業内容抜粋します。

プロダクトと先ほどのユーザー行動の紐付けはこんな感じですかね。
- Amazonで買い物することを認知してもらう:
- GoogleやFB等から取れる情報を活用しながらAmazonのサイトでお買い物を最もしてくれそうなユーザーを「CrossX」を利用して探る。
- Amazon内で商品の比較検討をしてもらう:
- 獲得したユーザーに合った商品をDMで提案するために「AIXON」を利用する。
例)スポーツに興味のあるユーザーは健康にも気をつけているのでサプリの案内をする。
- 獲得したユーザーに合った商品をDMで提案するために「AIXON」を利用する。
- Amazon内で購入候補の商品を決める(カートに商品をいれる):
- 「AiDeal」を利用して購入しそうなユーザーを特定し限定クーポンを発行をする。
- Amazonで商品を購入する:
- 購入後のユーザーの行動分析を行うことで更なるマーケティング分析に必要な情報を体系化するために「AIXON」を利用する
同社は具体例として以下を挙げていました。

事業モデル
事業モデルは事業内容で記述した4つのプロダクトをSaaS型で提供します。代理店経由の商流もあるようですね。

料金体系は各プロダクトで以下のように分かれているようです。
- CrossX:利用料ベースの従量課金
- AIQUA:サブスクリプション(月額固定)※アクティブユーザー数によって変化
- AiDeal:サブスクリプション(月額固定)
- AIXON:サブスクリプション(月額固定)
「AiDeal」はHPに最低利用金額が6万円/月(税別)と記載がありましたが、その他プロダクトの具体的な料金は分からず。。
ただ、契約単位は年間や複数年のようですね。
従量課金である「CrossX」が同社の最も収益比率の高いプロダクトという記載もあります。

ここらへんは純粋なSaaSのサブスクリプション銘柄とのピュアな比較ができない要素になっていきそうですね。
財務状況
事業内容の次は財務状況です。
以下の表は有価証券報告書からまとめています。
項目(単位:千円) | 2018 | 2019 | 2020 |
---|---|---|---|
売上高 | 6,290,557 | 7,219,735 | 8,970,097 |
売上成長率 | – | 114.77% | 124.24% |
売上原価 | 3,661,445 | 4,303,399 | 4,844,402 |
売上原価率 | 58.21% | 59.61% | 54.01% |
売上総利益 | 2,629,112 | 2,916,336 | 4,125,695 |
売上総利益率 | 41.79% | 40.39% | 45.99% |
販売費及び一般管理費 | 4,542,111 | 5,277,197 | 5,704,163 |
販売費及び一般管理費率 | 72.21% | 73.09% | 63.59% |
営業損益 | -1,912,999 | -2,360,861 | -1,578,468 |
営業損益率 | -30.41% | -32.70% | -17.60% |
2021年12月期の業績予想が見つけられませんでしたが、売上高成長率が加速していることから2021年さらに加速するのであればこの売上規模ではかなり好業績と言えそうです。

営業損益率が改善しており、これは一般管理費の中の人件費が抑えられていることが要因のようです。

売上高推移は上記の通り右肩上がりですね。ただ、SaaS企業にしては現時点で売上高成長率が24%程度は少し物足りないと言えそうです。
KPI
同社のKPIを見てみます。(ここはいつか詳細に分析したいものです。)

ARR94億円はフリーを超える規模。ARR成長率も日本企業の中ではかなりの高水準と言えそうです。
参考までに2020年11月版ではありますが、まとめているnote見つけたので貼ります。
参考:https://note.com/_funeo/n/nd0e570f163ab
また、解約率の開示もありました。

解約率から見える継続性の指標(NRR)も非常に優秀と言えます。
需給情報
IPOで株式がどの程度発行されるのか(新規発行株式)
IPOでは元々発行している株式がどの程度売り出されるか?(売出株式)
といった情報をおさえることが非常に重要です。
なぜなら、たくさんの株式が公募・売出されると、IPOで株式を割当てられた人達による売り圧力が存在することになるためです。
市場に出回る株式が多ければ多いほど上場後の初値は下がることになります。
逆に言うとセカンダリーを狙う人にとってはこういった銘柄を狙うことになります。
募集要項
それでは冒頭に記載した募集要項を再掲します。
項目 | データ |
---|---|
想定価格 | 1,400円 |
公募価格 | 1,600円 |
公募株数 | 9,101,000 |
売出株数 | 9,531,200 |
公開株数(合計) | 18,632,200 |
オーバーアロットメント | 984,700 |
上場時発行済み株数 | 99,872,490 |
想定ベースの時価総額 | 1,398億円 |
オファリング・レシオ(OA除く) | 18.66% |
- オファリング・レシオが20%付近は若干低い割合かと思います。
- 一方、そもそもの公開株数の規模が高いため初値は暴騰する可能性は低いですね。
- プライマリー目線はニュートラル(そこそこの上昇)、セカンダリー目線もニュートラルです。
株主構成
募集要項は上場直後の売り圧力を表しますが、株主構成では上場後一定期間たったあとの売り圧力を計るために重要な情報となります。
ストックオプション分の株式を除くと株主構成は以下になります。
(あまりにも多いのでスプレッドシートの画像にさせていただきます。。)


- かなりロックアップの条件が厳しいですね。ロックアップかかっていない株主もあまりIPOディスカウントのある初値や上場直後で売ることは無いのではと思っています。
- ロックアップかかっていない株主の割合は5%程度です。
- そのため、プライマリー目線・セカンダリー目線ともにポジティブです。
ソフトバンクが結構出資してますね〜。
株価の目安(バリュエーション)
株価目安を計る際には同業種の企業のバリュエーションと比較することになると思います。
Appier Groupは・・・海外売出がある、SaaS企業、マーケティング支援といった要素をふまえ、最近上場のプレイドと比較してみます。
プレイドの執筆時点の情報は以下の通りです。
銘柄番号 | 銘柄名 | 時価総額 (百万円) | 株価 | 売上高 (百万円) | 当期純利益 (百万円) | 売上高成長率 (%) | PSR | PER |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3915 | プレイド | 137,832 | 3,645 | 5,211 | -238 | 30 | 26.5 | -579.1 |
また、AppierGroupは2021年予想が出ていないのですが、かなり好業績であることもふまえ、売上高成長率30%を想定して売上高を推定すると、1,100億円となります。
その上でPSRのバリュエーションを行います。
- PSRでのバリュエーション:3,088円
上記水準は想定価格を大きく上回るものでした。
セカンダリー目線としてポジティブになると思います。
理想的には2,000円くらいで初値がとどまってくれるととても良い展開なのではと思っています。
終わりに
AppierGroupのプライマリーとセカンダリーの戦略をどうするべきか?をまとめていきます。
- プライマリー:
- オファリング・レシオが低い水準であるが、募集規模が大きいことから初値は暴騰しない
- ロックアップ条件がかなり厳しいのでポジティブ
- 参考:やさしいIPOというサイトでは約1.5倍の値が付くと予想されているようです。
- セカンダリー:
- 初値が暴騰する可能性は低いためポジティブ
- ロックアップが絞れているので需給面がとにかくポジティブ
- 理論株価的には3,000円程度なので初値が2,000円程度に収まると1.5倍程度のアップサイドが狙えそう
ということで、最後にまとめておきます。
- Appier Groupはマーケティング向けにAI技術をSaaS型で提供するビジネス
- プライマリー目線では想定価格の1.5倍程度と予想されている
- セカンダリー目線では業績がよく、初値が暴騰しないことからポジティブと考えられる
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初値
初値は2,030円で公募価格比+430円(26.9%)でした。
引けは1,740円でした。

プライマリーは微増、セカンダリーは今後期待ですね!
(とても低い引けだったので不安ですが。)
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